当時、提案を受ける側だった私は、仲介を疑問に思いながらも特に何かしようはしなかった。ところが、最初に努めていた会社が倒産し、状況が変わった。自分も技術者の仲介を行う必要性に迫られたからだ。
SESの仲介ビジネスはスピードが命。今朝届いた経歴書を夕方に見ていたのでは勝負にならない。すぐに見て、すぐに提案する。これが鉄則だ。もちろん、技術者のスキルや(勤務地などの)希望も考慮はされる。だが、業者間の暗黙のルールとして、先に面談を成立させた者に優先権が発生する。また、面談後に技術者側からお断りができるのは、面談実施後の1日程度が限界。それを超えていたり、お客様から面談合格の連絡があった後にお断りするとあからさまに嫌な顔をされ、今後の仲介に差し支える。つまり、案件の比較検討やじっくり考えることが出来ないのだ。
私にはこのスピード勝負が出来なかった。右にある案件と、左にある人材をマッチングさせる。成功すればマージンが得られる。時に技術者の思いは黙殺、封印される。誰の役に立って得られた利益なのか。そこに意義を見いだせなかったからだ。