デジタル化が加速する現代において、SES(システムエンジニアリングサービス)業界は大きな転換期を迎えています。従来型のプログラミングスキルの将来性、AIやローコード・ノーコード技術がエンジニアの働き方に与える影響など、多くの疑問が浮上しています。令和5年度情報通信白書を基に、これらの課題と今後の展望について考察してみましょう。
今後のSES業界を占う上で最も重要なキーワードは「データ」です。情報通信技術の進化やスマートフォンの普及に伴い、ネットワーク上では膨大な量のデータがやり取りされ、活用されるようになりました。このデータ流通量の増加と利活用の進展は、革新的なサービスを提供するプラットフォーマーの成長を促す一方で、データが一部のプラットフォーマーに集中する状況を生み出しています。
この状況下で重要になるのが、データの利活用と保護のバランスです。個人情報保護やデータポータビリティの確保といった課題に取り組みつつ、データの価値を最大限に引き出す方法を模索することが求められています。
Web3、メタバース、生成AIといった次世代技術も急速に発展しています。これらはすべて「データドリブン社会」を象徴するものであり、今後、データの重要性はさらに増していくでしょう。
これらの技術は、エンジニアの働き方や求められるスキルセットに大きな影響を与えると予想されます。
社会全体がデジタル化していくということは、同時にサイバー攻撃のリスクも増大することを意味します。 情報漏洩やシステムダウンといった事態を防ぐため、高度なセキュリティ対策がこれまで以上に求められるでしょう。
特に注目すべきは、サイバーセキュリティ人材の深刻な不足です。この分野のスキルを持つエンジニアへの需要は今後さらに高まると予想され、キャリア選択の上で重要な選択肢となるでしょう。
このような状況下において、SES業界は従来のビジネスモデルからの脱却を迫られています。求められるのは、変化に対応できる柔軟性と専門性の高いスキルです。
具体的には、以下のようなスキルを持つエンジニアへの需要が高まると予想されます:
もちろん、JavaやPythonといった従来のプログラミングスキルも引き続き重要です。特に、大規模・複雑なシステム開発や、新しい技術への対応には、依然としてプログラミングスキルが不可欠です。
技術スキルに加えて、「デジタル人材」としての総合的な能力も求められます。これには以下のような要素が含まれます:
「デジタル・シティズンシップ」の考え方も重要性を増しています。これは、インターネットを安全かつ倫理的に利用する責任と能力のことです。インターネット利用の低年齢化が進む中で、情報モラルやICTリテラシーの向上が社会全体で求められています。
エンジニアにとっては、単に技術を開発するだけでなく、その技術が社会に与える影響を考慮し、倫理的な観点から開発・運用を行う責任が増しています。テクノロジーの力を正しく理解し、社会に貢献する形で活用することが求められているのです。
SES企業は、時代の変化をいち早く捉え、これらのスキルを習得するための研修制度や、新たなビジネスモデルの構築など、積極的に取り組んでいく必要があるでしょう。
特に注目すべきは、政府が推進する「デジタル田園都市国家構想」です。この構想は、地方でのデジタル人材育成を重視しており、SES企業にとっても新たなビジネスチャンスとなる可能性があります。地方でのデジタル人材育成に貢献することで、企業の成長と社会貢献を両立させることができるでしょう。
SES業界とエンジニアの働き方は、データドリブン社会の到来によって大きく変わろうとしています。技術スキルの習得はもちろん、ビジネス理解力や倫理的な判断力も含めた総合的な能力が求められる時代になっています。
変化を恐れるのではなく、新しい技術やビジネスモデルに積極的に挑戦し、社会に貢献できるエンジニアこそが、これからの時代に求められる人材となるでしょう。SES業界も、そうしたエンジニアを育成・支援する重要な役割を担っていくことが期待されます。