90年代頃からでしょうか。
「褒めて育てる」という言葉をよく耳にするようになりました。
褒めることで子どもの自信を育み、成長を促すという考え方は広く受け入れられています。
しかし、本当に褒めるだけで成長を促すことができるのでしょうか。
実は、現代の心理学の観点から見ると、この「褒めて伸ばす」という方法には重大な欠陥があるのです。
確かに、褒めることには短期的な効果があります。
褒められると、人は嬉しくなり、やる気が出ます。
特に、新しいことに挑戦したり、困難を乗り越えたりしたときに褒められると、達成感が倍増し、さらなる成長への動機づけになります。
しかし、ここで重要なのは、この効果が「短期的」であるということです。
褒められることに慣れてしまうと、その効果は徐々に薄れていきます。
心理学的観点から見ると、人間の行動の背景にある動機は非常に重要です。
「褒められたら伸びるタイプ」の人は、実は自分の成長そのものよりも、褒められることに価値を見出しているのかもしれません。
このような人は、次第に褒められることが当たり前になっていきます。
そして、褒められない限り成長しようとしなくなるのです。
これは危険な依存状態と言えるでしょう。
さらに深刻な問題として、「褒められたら伸びるタイプ」の人は、褒められないことで仕事をすることの意義を見失ってしまう傾向があります。
彼らはしばしば「なんのために働いているのかわからない」という発言をします。
これは、彼らの動機づけが外部からの評価に過度に依存していることを示しています。
自己の成長や仕事の本質的な価値ではなく、他者からの承認が仕事の主な動機となっているのです。
このような状態では、持続的な成長や真の職業満足を得ることは困難です。
心理学では、動機づけを「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」に分類します。
褒められることを期待して行動するのは、典型的な外発的動機づけです。
外発的動機づけは、短期的には効果的かもしれませんが、長期的な成長を促すには限界があります。
なぜなら、外部からの評価や報酬がなければ、行動を継続する理由がなくなってしまうからです。
では、本当に成長する人はどのような特徴を持っているのでしょうか。
個人の成長と幸福を追求する上で、「自立」と「貢献」は非常に重要な概念です。
真の成長は、他人の評価に依存せず、自分の人生に責任を持ち、社会に貢献することから生まれるのです。
褒められることに依存する人は、実は自分に自信がなく、常に他人の承認を求めているのかもしれません。
しかし、このような依存状態からは真の自信は生まれません。
ここで誤解してはいけないのは、褒めること自体が悪いわけではないということです。重要なのは、褒め方と、褒める目的を再考することです。
「褒められたら伸びるタイプ」は、実は長期的には伸びないタイプなのです。
真に成長する人は、褒められようが褒められまいが、自分自身のために「勝手に」伸びていきます。
私たちに求められているのは、他人の評価に依存せず、自らの内なる動機に従って行動し、成長し続ける姿勢です。
褒められることを期待して行動するのではなく、自分自身の価値観や目標に基づいて行動する。
そして、その過程で得られる学びや成長そのものを楽しむ。
それが、真の意味での「伸びるタイプ」と言えるのではないでしょうか。
仕事の意義は、他者からの承認ではなく、自己実現や社会貢献にあることを忘れずに、日々の業務に取り組むことが重要です。