こんにちは、ITエンジニアの皆さん。今日は、スキルアップについて少し異なる視点からお話ししたいと思います。特に、「資格取得」と「興味駆動型学習」という2つのアプローチを比較し、後者がなぜより効果的かを説明します。
まず、「興味駆動型学習」について説明しましょう。これは、個人の興味や好奇心に基づいて学習を進めるアプローチです。従来の決められたカリキュラムや外部からの要求ではなく、自分が「知りたい」「できるようになりたい」と思う対象に焦点を当てて学ぶ方法です。この学習法の特徴は、内発的動機付けによる高いモチベーション、深い理解、そして長期的な知識の定着にあります。
では、具体的な例を見てみましょう。
Aさんは、入社5年目のITエンジニアでした。最近、会社でクラウド関連のプロジェクトが増えてきたことを受け、自身のキャリアアップのためにAWS認定ソリューションアーキテクトの資格取得を目指すことにしました。
毎日の業務をこなしながら、夜遅くまで勉強を続けるAさん。休日も返上して模擬試験を繰り返し、6ヶ月間ひたすら資格取得に向けて努力を重ねました。しかし、実際の業務では従来のオンプレミス環境での開発が中心で、学んだ内容を直接活かす機会はほとんどありませんでした。
ついに迎えた試験日。Aさんは緊張しながらも、これまでの努力を信じて挑みました。しかし結果は不合格。「なぜだろう?」と落胆するAさん。振り返ってみると、テキストの内容は覚えていたものの、実践的な理解が足りなかったのかもしれません。
この結果に、Aさんは大きなショックを受けました。「6ヶ月間も頑張ったのに、結局時間を無駄にしてしまった」という思いが頭をよぎります。それ以降、Aさんは新しい技術を学ぶ意欲を失ってしまい、日々の業務をこなすだけの日々が続くようになりました。
一方、Bさんも同じく入社5年目のITエンジニアでした。Bさんは特定の資格取得を目指すのではなく、その時々の興味に応じて様々な技術を学んでいきました。
最初は、Webアプリケーションのフロントエンド開発に興味を持ち、ReactやVueなどのフレームワークを独学で学び始めました。会社の業務ではバックエンド開発が中心でしたが、空き時間を見つけては小さなプロジェクトを作成し、学んだ内容を実践していきました。
数ヶ月後、あるテックカンファレンスに参加したBさんは、マイクロサービスアーキテクチャに魅了されます。「これは面白そうだ」と思ったBさんは、すぐにDockerやKubernetesの学習を始めました。オンラインコースや技術書を活用しながら、自宅のPC上に小規模なマイクロサービス環境を構築。失敗を重ねながらも、少しずつ理解を深めていきました。
その後も、機械学習、ブロックチェーン、エッジコンピューティングなど、次々と新しい分野に興味が移っていきます。しかし、Bさんにとってはどの学習も無駄になることはありませんでした。フロントエンド開発で学んだユーザー体験の考え方は、機械学習モデルの結果を可視化する際に役立ちましたし、マイクロサービスの知識は、ブロックチェーンの分散システムを理解する上で大いに参考になりました。
気がつけば、Bさんの机の上には様々な技術書が積み重なり、PCには数多くの小さなプロジェクトが並んでいました。学ぶことが習慣となり、新しい技術に触れるたびにワクワクするようになっていたのです。
この継続的な学習の姿勢は、会社でも評価されるようになりました。新しいプロジェクトが立ち上がる際には、「Bさんならきっと面白いアイデアを出してくれるはず」と、真っ先に声がかかるようになったのです。
AさんとBさんの物語を比較すると、興味駆動型学習には以下のような利点があることがわかります:
実は、これらの学習アプローチの違いは、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの考え方を用いて説明することができます。アリストテレスは、人間の活動を「キーネーシス」と「エネルゲイア」という2つの概念で捉えました。
この観点から見ると、Aさんの資格取得アプローチは「キーネーシス」的で、Bさんの興味駆動型学習は「エネルゲイア」的だと言えます。
資格取得アプローチは、以下の特徴を持つキーネーシス的な活動です:
対照的に、興味駆動型学習は、以下の特徴を持つエネルゲイア的な活動です:
IT業界の資格は確かに、キャリアにおいて役立つこともあります。しかし、真のスキルアップと持続的な成長をもたらすのは、自らの興味と情熱に基づいた学習です。
エネルゲイア的なアプローチを取ることで、「失敗」の恐れなく、常に前進し続けることができます。どの段階で立ち止まっても、そこまでの学習が全てスキルとして蓄積されるのです。さらに、このアプローチでは、新しい興味や技術への移行がスムーズで自然なプロセスとなります。
ITエンジニアの皆さん、次にスキルアップを考えるとき、「どの資格を取るべきか」ではなく「IT業界のどの分野に本当に興味があるか」を自問してみてください。その答えこそが、あなたを次のレベルに導く鍵となるでしょう。そして、その過程で得られる全ての知識と経験が、あなたの貴重なスキルとなり、次なる挑戦への足がかりになることを忘れないでください。
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