先日、「社長が会社のお金で高級車を買っても良いのか?」というSNS上の議論を目にしました。
多くの人が「何が悪いのか?」といった反応を示しており、極端な意見では「会社のお金は社長のもの」と主張する声もありました。この議論を見て、私は大きな違和感を覚えました。
もちろん、高級車の購入や豪華な飲食が全て悪いわけではありません。正当な理由があれば、高級車の購入は企業のイメージ戦略の一環となることもあります。たとえば、ステータスを示すことで信頼を高め、高所得者層へのアプローチを図ることが可能です。しかし、そうした理由がない場合、それらは単なる私的な浪費であり、企業の健全な成長を阻害する要因となります。
私がこの問題を実感したのは、かつて勤めていた会社での出来事です。決算書を確認した際、会社の経費として計上されていた高級車が、誰も見たことがないものであることが判明しました。その結果、従業員のモチベーションは大いに下がり、業績も低下しました。
また、別の会社では売上が好調であるにもかかわらず、純利益が伸び悩んでいました。賞与は支給されず、昇給もない状態でした。調べてみると、社長が私的な飲食を頻繁に「接待交際費」として経費に計上していたことが原因でした。こうした行動が会社の成長を妨げ、長期的には財政状態の悪化を招きました。
一部の社長は高級車を乗り回したり、豪華な接待で豪遊することがありますが、そうした行動が見られる場合、会社の経費を不正に私的流用している可能性があります。会社のお金は法人としてのものであり、社長個人の私物ではありません。そのため、私的な目的で会社の資金を使うことは、法的に問題となる可能性があり、企業の成長を阻害する要因となります。
企業の利益は、本来、新規事業の立ち上げや設備投資、人材育成など、将来の成長を見据えた使い方をされるべきです。高級車や私的な豪遊に資金を費やすことは、短期的には社長個人の満足を得られるかもしれませんが、企業の長期的な発展に悪影響を与えます。
節税を理由に個人的な支出を経費として計上する社長も少なくありません。たとえば、個人的に使う自動車を会社の経費で購入したり、飲食代を「接待交際費」として計上する行為は、脱税行為に該当する可能性があります。節税という名目で経費を増やせば、結果的に税金は減りますが、同時に会社の利益も減らしていることになります。中には、役員報酬の代わりとして、個人的な飲食を経費で落とすという人もいますが、それこそ法人と個人を混同し、脱税や特別背任の疑いが生じる可能性があります。
短期的には節税のように見えるかもしれませんが、実際には利益の減少に直結し、長期的には会社の財政状態を圧迫する要因となります。このような短絡的な利益削減は、企業の成長を阻害し、最終的には従業員や取引先、投資家にも悪影響を与えます。
社長には、リーダーシップ、ビジョン、戦略的思考力などが求められますが、会社の利益を圧迫して私的に浪費する行為をしている限り、そのリーダーシップには説得力がありません。リーダーとして企業の未来を見据え、責任あるお金の使い方ができなければ、従業員や関係者の信頼を得ることは難しいでしょう。
こうした経験から、私は社長として二つの方針を決めました。
一つ目は、私的な支出を会社の経費にしないことです。社用車を所有せず、移動には公共交通機関を利用することで、無駄な支出を抑えています。社長自らが無駄をなくす姿勢を示すことで、従業員にもその姿勢が伝わると考えて行動しています。
二つ目は、私的な飲食費や接待費を必ず個人負担にしていることです。会社にとって明確な利益がない場合や、私的な目的であれば、経費として扱いません。この方針によって、会社の資金を適切に管理し、利益を守ることができます。
この経営方針により、無駄な支出が減少し、結果として利益が経営者を含むすべての社員に還元されるようになりました。社員のモチベーションも上がり、透明性のある経営を喜ぶ声が届き、企業の成長を促進しています。従業員は、社長が会社の資金を私的に使っていないことを実感し、公正な評価を得ていると感じて仕事に一層励むようになりました。
最終的に、社長の行動が会社の未来を決定づけます。利己的な行動をせず、企業全体の利益と成長を見据えた経営を行う社長こそが、健全な企業を築くことができます。
高級車や豪華な生活を送る社長を見かけた場合、会社の資金の使途については注意深く確認する必要があります。
会社のお金の使い方には、その社長の本質が現れます。その姿勢を見極めることで、あなたのキャリアや企業の将来を守る重要な判断材料になると思います。